社会人大学院の入試対策で、大部分の時間を占めるのは小論文。単に『○○について論ぜよ』という乱暴な問題もあれば、短い課題文章があって、設問ベースで自分の考えを論じる、みたいなフォーマットもあります。過去問を眺めていると、わりと面白い課題文章を発掘できたりします。
この記事では、東工大技術経営(MOT)の、平成24年度夏入試問題の小論文について考察します。模範解答とか大それたものではなく、国内大企業の理系エリートサラリーマン集めに本気な、東工大MOTの斜め上な試験問題を一緒に楽しむ記事です(笑)
MOT問題文の要約
MOT(技術経営)と金融工学のどちらの問題を選んでもよいのですが、この記事ではMOTの問題を取り扱います。問題文をじっくり読みたい方は、リンクを開いてください。面倒くさい方は以下の要約をご覧ください。
- ある企業は競争が厳しい市場で、国内企業とシェア争いを繰り広げている
- 勝ち残るため、製品の開発と製造を海外にアウトソースしようとしている
- 国内同業で5年以上海外の同一企業に委託を継続している2社にインタビューを実施
- 海外委託の成功要因を3点抽出し、特定の海外委託企業を選定した
- なお、自社が同業他社にない技術を有していることが必要であるらしい
なんか、既にツッコミどころ満載で、読んでいるだけなのに穴があったら入りたい気分です。でも、ここでひるんではいけません。これは揺動作戦なのです。東工大MOTの問題文は、だいたいツッコミどころ満載で、その論理構成の中に、明らかな隙を与えています。
要約1つ1つにツッコミをいれてみましょう。ハリセンの準備はよろしいでしょうか?
MOT問題文の分析
要約をベースに、一般常識から考えてみて、明らかに「?」と思うことがいくつかありますよね。例えば、
- 競争が厳しいのに、同業他社に聞けるの? 教えてくれるの?
- 勝ち残るために、製品の開発と製造を海外にアウトソースするのは正しいのか?
- 5年以上海外の同一企業に委託を継続している同業他社は本当に真似をしてよい対象なのか?
- 同業他社は嘘つかないのか? 教えてくれた成功要因を真に受けるのか?
- 自社が同業他社にない技術を有しているのに、開発を外注していいの?
のように、要約を組み合わせてコンテキストまで考えなくても、要約1つ1つに対して、そこはかとなくツッコミを入れたくなります(笑)
この問題文を読みすすめるうちに、最低でも5回はボケていることが確認できました。驚くべきことに、問題[1]で、またボケてるんです、問題なのにw。
問題って、ボケていいんでしたっけ?
あなた(解答者)は、この話をまとめたリーダーから、自社が同業他社に無い技術をもっているかを評価しろって言われたらしい。なぜなら、それが成功への必要条件だから。何をどう調査して評価すべきか述べよとか、もうお腹痛いですよね。涙をこらえて、ここはグッと我慢して、真面目に取り組みましょう。あなたの出世にひびく可能性があります。たとえリーダーがボケていても、自分もボケなくてはなりません。決してまともなツッコミはいけませんよ。
問題はノリツッコミ
ちょっとテンションがおかしくなってきましたが、無事に問題[1]を突破し、ボケに対して真面目にボケ返したあなたはもうすぐゴールです。問題[2]を見てください。
『海外委託の成功の必要条件の仮説を得るに至ったリーダーの調査方法、仮説の導出過程、導出された仮説は適切だといえるかどうかを、その理由とともに説明しなさい』
えっと、、、、
さっき、調べましたよね?
その成功の必要条件とやら。その上で、
リーダーを全否定する気ですかぁ??
完全に突っ込む気マンマンですよね、ボケに問題[1]でのってあげておいて、問題[2]で突っ込むの、まさにノリツッコミですやん。
まとめ
東工大MOTの試験はこのような構成が多いように感じます(ちょっと悪ふざけしましたが)。
- 一定の範囲で成り立つ論理を展開させる
- その論理が範囲を超えて、是が非か、範囲の前提条件を自分で考えて論じさせる
みたいな問題が多いです。なので、最初の問題は悪ノリ、次の問題は範囲の前提を徹底的に考察、というスタイルになっています。
経営学のような社会学は、自然科学ほど境界条件が明確に定義されないことが多いので、空中戦になりがちです。実際に東工大MOTで講義やグループワークで議論するときも、前提条件と論理の適用範囲を強烈に意識して議論した記憶があります。
このような視点で、東工大MOTの過去問を分析してみても面白いですね。
本ブログのMBA/MOTカテゴリーでご紹介している内容は、以下の記事をご参照ください