ビジネスマンでMBAを知っている人はいても、MOTを知っている人ってあんまりいないような気がします。簡単に言うと、技術経営っていうぐらいなので、技術に関係する会社の経営をうまくやるためのツールです。キーワードだけ知っていても、いつ、どこで、何の役に立つのか、肌感覚がないと、時間とお金をかけて学んでやろうって気になりませんよね。
この記事では、実際にMOTを学んだ経験をもとに、会社でいつ、どこで、なんの役立っているのかをご紹介します。
目次
- 技術経営MOTで学ぶこと
- 経営学の基礎 →事業計画を立てるシニアマネージャー
- 技術戦略 →技術の方向性を決める現場のマネージャー
- マーケティング →市場と社内を繋ぐスーパーマン
- 技術経営MOTを学ぶオススメ時期
技術経営MOTで学ぶこと
そもそもMOTでは何を学ぶのか、超ザックリと項目分けをして、それぞれがいつ、どこで、なんの役に立つのか、順を追って紹介します。いきなりですが、ザックリいうと以下の3点です。
- 経営学の基礎
- 技術戦略
- マーケティング
では、このカテゴリーごとに紹介していきましょう。
経営学の基礎 →事業計画を立てるシニアマネージャー
経営の基礎が分かってないと、社長や経営者と会話すら成り立ちません。英語が分からないのにアメリカ人に話しかけるようなものです。これを分かってない人が会社の中で、マネージャレベルでもウヨウヨいますので、この記事を読んでくれた方は勘違い中年オヤジにならないように、注意してくださいね。
中期計画の立て方や事業戦略立案など、会社によってフレームワークやプロセスが内製化されていることも多いですが、基本的な経営学の基礎を学んだ上で取り組むことで、より中身の濃いアウトプットが生まれると思います。そのへんのビジネス本でSWOT分析とかをサラっと流し読みしたレベルでもよいですが、ツールはツールとして、なぜそのツールを使うのか、そのツールの前提条件はなにか、ツールでカバーできない限界点はどこか、などなど、しっかり理解しないと逆に間違った方向に行くので注意が必要です。
経営の基礎を勉強し、ケーススタディをグループワークで取り組むことによって、その知識と実践を疑似体験できるのが、ビジネススクールのよいところです。あなたが事業計画を立てるシニアマネージャーであれば、ケーススタディ、グループワークの経験をもとに、一緒に取り組む他のマネージャーや部下をファシリテートとして、よりよい、手触り感のある戦略立案ができるようになると思います。
技術に関係する会社で、事業計画を立てるシニアマネージャーには、MOTはとても役に立ちます。
まとめ
- いつ:事業戦略をつくるとき
- どこで:シニアマネージャーのポジション
- なんの:戦略フレームワークを使いこなす役に立つ
技術戦略 →技術の方向性を決める現場のマネージャー
イノベーションって昔の人は技術革新って訳しましたが、別に新しい技術じゃなくても、既存の技術の組み合わせで新しいモノやサービスが生まれて、社会に大きな経済圏ができあがればよい。簡単に言うと、誤訳です(笑)。技術の組み合わせが注目されるようになったキーワードである、オープンイノベーションですが、これが本来の意味に近いのではないかと、個人的には考えています。
NIH (Not Invested Here)というキーワードも、一時期流行しましたね。自社がどの技術領域に注力し、どれを外から買ってくるか、ROIの面でも非常に重要なイシューですが、これらを実務で取り組んでいるのは、技術系の現場のマネージャーかと思います。日々、エンジニアと向き合い、時には外部の会社とガチで議論し、市場で起きている生の声を一番浴びているのが、現場のマネージャー。
自分の会社が、どのように技術に向き合うのか、事業戦略と足並みを合わせた技術戦略を作るためには、経営学の基礎を理解しつつ、イノベーションの仕組みを分析するスキルが必要だと思います。イノベーションは、あまり人がやらないことを成し遂げたときに生まれてくるケースが多いので、いくら過去の仕組みを学んだところで、それは二番煎じ。よって、仕組みを理解できる分析スキルがあれば、今後、自社で狙うイノベーションに対して、構造的に分析できるようになります。とにかく、色んなイノベーションの事例を取り扱うビジネススクール、特にイノベーションを中心に取り扱う技術経営は、まさにそのためにあると言っても過言ではありません。
現場の技術系マネージャーこそ、技術経営を学んで欲しいと思います。
まとめ
- いつ:技術戦略をつくるとき
- どこで:現場の技術系マネージャーのポジション
- なんの:イノベーションの構造を理解するのに役に立つ
マーケティング →市場と社内を繋ぐスーパーマン
社会人が通う大学院って、企業の人を講師で呼ぶ講義が多々あります。いわゆる、イノベーションを起こした事例と、その経験談を語ってもらって、学生が質問したり議論したりする形式。ぶっちゃけ、これが一番面白い。大規模に行われる講演会よりも、手触り感があり、泥臭く、失敗例にも何の躊躇もなくお話いただける方が面白いに決まってます。こういった、面白い講師を招集できる大学講師のコネクションが、ビジネススクールの価値に直結しているとも言えます。
2年間の在学中、30名近くの講師の方からお話を伺いましたが、ザックリ言うと、市場をよく観察していて、市場への導入もすごく丁寧。そして、社内政治にも長けていて、技術の実権を握るマネージャーとのコネクションや、社内を動かすための力学構造も掌握している。市場に導入したいモノやサービスを定義し、社内を動かして、世の中に投入する戦略家。つまり、マーケッター。
マーケッティングって、ある企業と市場とのインターフェースで行われる全ての活動という定義だとします。イノベーターは、それに加えて社内リソースとのインターフェースもとってしまう、市場と社内を縦横無尽に繋いでしまう、スーパーマンです。
技術に関係する会社の経営者は、このような人材が喉から手が出る程、欲しいのではないでしょうか。
まとめ
- いつ:新しい商品・サービスを立ち上げるとき
- どこで:イノベーターとして社内・社外を動かすポジション
- なんの:経験談をもとにした振る舞いをする役に立つ
技術経営MOTを学ぶオススメ時期
大体入社5年目~10年目ぐらいがよかろうと思います。どの業界でもよいし、プロパーであろうが転職していようが構いません。仕事を始めてから、大体5年ぐらいすれば、自分の軸みたいなものが出来上がってくるし、それを武器に外の世界に触れたいと思い始めるのではないでしょうか。ちょっと古い考えかもしれませんが。
MOTって、技術に関係する会社の経営をうまくやるためのツールなので、ツールだけ知っているより、少しでも経験をしていた方が、より箔が付きます。新卒でMOTを学んで、戦略コンサルという道もあるとは思いますが、現場でツールを使いこなすコンサルタントの方が近道だと思います。
以上、ザックリですが、MOTがいつ、どこで、何の役に立つのかを解説しました。
本ブログのMBA/MOTカテゴリーでご紹介している内容は、以下の記事をご参照ください。