湾岸プロマネ日記

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5Gとは何か。企業が生き残るための第一歩。

2020年の東京オリンピックを目指して、投資や実証実験が進む5G。スマートフォンや自動運転、IoT等、メディアで取り上げられる機会が増えてきましたが、5Gっていったい何もので、どんな企業が主役になるのでしょうか?

 

スマートフォン以外の産業へ触手を伸ばそうとするのが、ある意味今までの世代とは決定的に異なる技術です。5Gで影響を受ける業界は、うかうかしていると大きなチャンスを見逃すことになり、最悪の場合は将来、市場からの撤退を余儀なくされることも考えられます。

 

そんな業界の方々、その中でも特に、新しい技術を捉えて新しい商品やサービスを産み出す責任のある、技術系マネージャーの方々へ、5G時代での生き残り方をザックリ説明したいと思います。

 

 目次

 

 

5Gの3つの特徴とその真実

次世代通信技術である5Gの特徴は、大きく分けて以下の3つで語られます。

  1. 高速大容量通信 eMBB=enhanced Mobile Broadband
  2. 超高信頼低遅延 URLLC=Ultra-Reliable and Low Latency Communication
  3. 超多接続 mMTC=massive Machine Type Communication

 

総務省の5G利活用アイディアコンテストのサイトで、概要が1枚の図にまとまっているので、ご参照ください。

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 出展:総務省|5G利活用アイディアコンテスト

 

これらの3つについて、技術的にもユースケース的にも、既に多くのサイトで紹介されていることから、この記事で、これらの詳細について説明することは致しません。他のサイトで説明されていなく、かつ、この記事で紹介したいことは、これらの特徴を組み合わせて、どのようにユーザーがそのご利益を得られるかについて、その背景を含めて概要を説明したいと思います。

 

2018年現在、私はスマートフォン業界の5Gの荒波の真っただ中におりますが、5Gについて勉強を始めた当初、どのサイトやブログにも記載がなく、「実際どうなるのよ?」という疑問が拭えなかったことがあります。それは、これら3つの特徴をどうやって組み合わせるのか、です。基地局ベンダー大手であるHuaweiのサイトでは、

  • 10Gbpsの通信速度 (eMBB)
  • 1ミリ秒の超低遅延 (URLLC)
  • 1,000億規模の接続数 (mMTC)

と具体的に書かれていますが、例えば、約1000万人の人口の東京都民全員に、10Gbpsのライブ動画が1ミリ秒の低遅延で配信できるのか。上記は理論値なので、そこまでいかないのは分かりますが、ポイントはこれら3つの特徴は、それぞれの技術をフルスペックで提供することはできないということです。これ、真実です。

 

逆に言うと、これらのネットワーク技術を組み合わせて、1つの特徴あるネットワークをつくることが5Gの肝となります。これをネットワークスライシングと言います。

 

 

 

5Gの3つの特徴の組み合わせ、ネットワークスライシング

このネットワークスライシングについても、既に多くのサイトで紹介されています。簡単に説明すると、通信事業者が持っているネットワークリソース(周波数帯域やスピード)を、3つの特徴にそれぞれアロケーションして、サービスをパッケージ化することです。さらに言うと、今までの4G世代のネットワーク技術ではネットワーク構成の中は専用機器で制御されていたので、柔軟に対応することができませんでしたが、5Gからは汎用サーバーで実現し、ソフトウェアでそれが制御できるようになります。これをバーチャライゼーションと言います。

 

例えば、日本中に張り巡らせたガスメーターを人力で検針していた状況から、ガスメーターにセンサをつけてオートメーションするケースを考えます。ガス代を月額で支払うとすると、1か月に1度、せいぜい8ビットぐらいのガス消費量が分かれば事足ります。つまり10Gbpsの通信速度や1ミリ秒の低遅延なんてオーバースペックもいいとこで、その地域の戸数、つまり、メーター数だけ接続すればよく、高速通信や遅延なんて関係ないネットワークで十分です。メーター側もメリットがあり、バッテリが小さくて済むし、複雑なアンテナ構成も必要ありません。

因みにこういったユースケースはLPWA (Low Power Wide Area)という概念でも語られており、特化した通信技術が乱立しつつあることもお伝えしておきます。

 

3つの特徴を組み合わせるネットワークスライシング。ネットワークリソースの限界まで、何でもできそうな気がしてきましたね。理論的にはその通りなのですが、実際問題、そう上手くはいきません。

 

 

 

5Gはチューニングすることで便利になる

5Gは3つの特徴を組み合わせるネットワークスライシングだけ考えていればよいのかというと、答えはNOで、そんなに単純じゃありません。NR (New Radio)のRAT (Radio Access Technology)仕様の中でも、膨大なパラメータがあり、それより上のネットワークレイヤのパラメータを考えると指数関数的に組み合わせが増えてきます。

 

ある程度の仕様は、基地局側とターミナル側での最初のプロトコル通信で動的に調整できます。これは、無線通信よりも昔の、インターネットプロトコル時代と考え方は一緒です。例えばスマートフォンがどのRFバンドをサポートしているか、どのバンドの組み合わせ(Carrier Aggregation)をサポートしているか、など、4G時代でもeNode Bという基地局装置とプロトコル通信をしてパラメータを調整しています。

 

これらの組み合わせは3GPP標準で規定されていますが、通信事業者とスマートフォンメーカーは、お互いが仕様通りに実装しただけで、お客さんに販売しているのではありません。一つ一つのパラメータの組み合わせを、ラボで評価し、実網環境で評価し、車や電車で高速移動したときでもハンドオーバーできるかなど、様々な評価をして品質担保して、お客さんの基に届けられます。

 

つまり、ネットワークスライシングで、膨大なパラメータを最適化してサービスを提供するには、その最適なパラメータを探り当て、様々な環境で評価して品質担保する必要があります。5Gはできることが大幅に広がるというポテンシャルがありますが、その中身を選んでサービスが可能なレベルまで品質を担保することは避けられません。逆に、チューニングが上手くできると、超便利なサービスが提供できるということが言えるので、そのノウハウやパッケージング能力がサービスの競争力に直結し、結果的にその企業のパフォーマンスにも表れてくると予想できます。

 

 

 

5G時代に備えるために

スマートフォン業界以外で、5Gに関連する企業の技術系マネージャーが、5G時代に備えるため、まず初めにやらなければならないことは、非常に簡単です。通信事業者とコンタクトをとることです。常設されているデモブースでも、展示会のワークショップでもなんでも構いません。

 

冒頭にも述べましたが、5Gはスマートフォン以外の業界への波及効果が今までの世代とは異なります。先行してインフラに投資する通信事業者にとって、未来にどんなユースケースが登場するのか、企業価値に直結する話です。さらに言うと、今までカバーしてきた業界以外のノウハウや業界情報は、喉から手が出る程欲しいハズです。

 

ご自身の会社がどのようなチューニングをすれば、よりよい商品やサービスがお客さんに提供できるのか。他社より先に手を付け、ノウハウを蓄積していくことが先決となります。通信事業者は、似たような業界のユースケースには、同じパッケージを提供すると予想します。なぜなら、先に述べたように、パッケージを作るための評価工数やメンテナンス工数が増えるからです。つまり、ゆくゆくは同じプラットフォーム上で競合他社と競争していくことになるので、勝負の分かれ目は如何にそのプラットフォームを使いこなすかです。中身を知らなければコストダウン交渉もできないし、微妙な使い勝手をチューニングすることもできません。

 

 

5G時代に企業が生き残るためには、他社に先駆けて、プラットフォーマーである通信事業者と手を組むこと。当たり前の結論ですが、当たり前の行動を起こせる企業が、当たり前のように勝つ業界だと思います。

 

 

本ブログのモバイルカテゴリーでご紹介している内容は、以下の記事をご参照ください。

www.nittakeshi.com