湾岸プロマネ日記

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MOTの使い方~事業部で生かすには~

MOTで学んだ技術経営を、所属企業で生かす方法シリーズ、「事業部で生かすには」。この記事では、技術を扱う企業において、事業運営を行う部署でのMOTの使い方について紹介します。ポイントは、「MOTを学んだ人を扱うためにMOTを利用する」、という身も蓋もない話ですw。

MOTでは、技術をマネージすることが重要だよ、イノベーションを経営の中心に据えよう、みたいなことを学びます。前者は研究開発に関わる部署向けですが、後者はいわゆる事業部という部署で、MOT修了後10年ぐらい経ちますが、ようやくイメージが湧いてきました。

 

目次

 

事業部の仕事とは

まず、議論を進めるために、事業部の仕事について、その概要を簡単にまとめます。MOTと事業部の話をしたいので、その関係性にフォーカスできるよう、バリューチェーンモデルを用います。

バリューチェーンでは、主活動と支援活動の二つにプロセスを分けています。解釈の仕方は様々あるとは思いますが、この記事では、支援活動にある技術開発の部分を、MOTにおける技術マネージメント領域とします。一方で、事業部の仕事は主活動である購買、製造、出荷、マーケティング、販売、サービス等の一連のプロセス全体を表します。この主活動でお金を稼ぎ、その事業のPLに責任を持ちます。

 

ところで、こうして考えてみると、バリューチェーンの概念はすごくよくできていると改めて感じます。例えば、「製造」を例に挙げてみると、リードタイムを短くしたり、製造原価を下げたり、製造品質を高める支援活動と、市場の需給を察知して製造をコントロールするのが主活動と解釈することができます。

このとき重要なのは、支援活動→主活動という具合に一方通行では無駄が多くなってしまいます。リードタイムや製造原価、製造品質がターゲット市場にミートするように、主活動側が支援活動側に予めインプットし、それを支援活動側が開発期間に実装し、主活動側に受け渡すというプロセスがあれば、より効率的なバリューチェーンが構築されます。

事業部(主活動側)から見ると、技術開発(支援活動側)を1つのプロセスだと思って、その入出力を管理することで、効率的な事業運営が行えると言うことができます。技術開発をする部署=MOTとすると、MOTを使っている人に対して、事業部の人がインプット・アウトプットを定義して上手く扱うことが、その事業が成功するポイントであることがお分かり頂けたかと思います。

 

 

 

MOTが欲しいインプットと出したいアウトプット

技術開発を行うMOTをバリューチェーン上で支援活動と整理しましたが、決して脇役ではありません。主活動である事業部は、PL責任を持っているが故に完全成果主義で固定費である人員は極限まで絞られますが、技術開発を行うMOTから、市場で戦うための切れ味の鋭い武器=商品やサービスを心から欲しています。恐らくどの技術系企業でも、人員配置は事業部より技術開発が圧倒的に多いことでしょう。

事業部が市場で戦うための商品を出す(アウトプット)ために、MOTを使う技術開発部が必要なこと(インプット)は何か。それはターゲット市場と市場要求です。技術開発部とはいえ、そのパフォーマンスを測る指標として、そのアウトプットがどのぐらい収益を生んだのかは確実に考慮されます(それが全てでは近視眼的に短期的な利益を追い求めて技術の蓄積がおろそかになることから、例えば3Mの30%ルール等、発想を豊かにするため、活動にアソビを持たせている企業もあります)。

アウトプットを出すためには、事業部が何を求めているのか、インプットとしてVOCを聞く必要があり、それは、事業部がPLを最大化するために見込んでいるターゲット市場と市場要求です。自社の業界なのでターゲット市場と市場要求ぐらい自分で把握してるよ!ってご意見もあろうかと思います。

しかし、その会社の経営戦略からブレークダウンされた事業戦略は、その事業固有のもであり、その事業部にしか判断できません。そもそも業界内のプレイヤーは自社のポジショニングを確保すべく、他社と異なった市場、市場要求を独自に戦略的に定義します。業界の一般的なデータを見て、規模の大きい市場やトレンドを自社のターゲット市場と市場要求だと解釈してしまうと、リーダー企業にコスト体力で勝てないので、事業戦略としては確実に失敗します。

よって、ある企業において、技術開発部がインプットとして受けるべきターゲット市場と市場要求は、その企業の事業部が決めた事業戦略から導き出したものでなければなりません。そして、そのアウトプットを使って計画通りにPLを作っていくという、一蓮托生のプロセスが事業を成功に導く必要条件と言えるでしょう。

 

 

 

MOT人を扱う事業部が必要な分野

技術開発部に対し、事業部はターゲット市場と市場要求を注入する必要があることを説明しました。では、どうやったら事業部の人間がこれらを生み出すことができるのでしょうか。実はそんなに難しい話ではなく、経営学の分野でいうと、管理会計とマーケティングです。

 

管理会計知らずして事業運営ができるのかと問われれば、言わずもがなですよね。技術開発部を動かすのに重要なのは、事業が成功だといえる利益を生み出すために、どのぐらいの開発費を使ってよいのか、その妥当なターゲットを示すことです。

技術開発部は、技術を磨いて、世の中に役に立つもの、お客さんがワクワクするような商品やサービスを上市し、その結果として設けることをモチベーションにしています。その源泉は間違いなく人員や設備投資なので、そこに使えるお金をよくわからない無理なターゲットに制限されたくありません。

管理会計を勉強して、納得感のある数字作りをすることで、技術開発部に気持ちよく仕事をしてもらいましょう。

 

マーケティングについては技術開発部へのインプットとアウトプットの両面が重要です。インプットについては、作るターゲットをしっかり固めること、つまり市場要求をしっかり読み切ること。事業部が狙うターゲット市場のポジションに必要な市場要求を、市場のファクトである数字や、販売部から吸い上げたトレンドを分析して、腹をくくって決めきることで、技術開発部とガッチリ組んで商品・サービス開発を行います。

アウトプットについては、技術開発部つくてくれた市場で戦う武器を、単なるスペックの羅列ではなく、こだわったユーザーエクスペリエンスや、商品・サービスを作る過程のストーリー、イノベーターやアーリーアダプターを唸らせる技術のカラクリを正しく市場に伝える、プロモーション軸でのマーケティングが必要となります。

 

管理会計とマーケティングが、技術開発部の技術経営を盛り上げ、市場で戦う最適な武器を作ってもらうために、MOT人を扱う事業部として必要なスキルだと考えることができます。

 

 

まとめ

MOTで学んだ知識をどう使うのか?ということをこの10年ぐらいずっと考えてきましたが、事業部という組織に参加することで、MOTで学んだ人をどう扱うのか?という、外側からの客観的な視点が持てるようになりました。MOTで学んだ人が、研究や開発の部署で一生懸命技術マネージメントを行っていても、それを事業化し、経済的な価値に変えなければ、企業経営としては失敗と言わざるを得ません。MOTを生かす意味でも、MOTを使っている人を上手く扱えるようになりましょう。

 

 

本ブログのMBA/MOTカテゴリーでご紹介している内容は、以下の記事をご参照ください。

www.nittakeshi.com