5G元年である2018年。商用サービス開始のニュースが、毎月、世界のどこかで配信されています。国内では2020年の東京オリンピックを目指し、急ピッチで実証実験が進んでいます。新しい通信技術の導入に際し、先行者がその莫大な経済的利益を享受できることが、過去の歴史で証明されており、アメリカや中国は、その覇権を握るべく、貿易戦争まで勃発しています。
私たち個人レベルで見ると、自分の会社がその波に乗れるのか、重要な局面であると言っても過言ではありません。一方で個人の資産に対してはどうでしょうか。少しでも5Gに対して興味をもっているあなたは、どの企業が今後伸びていくか気になりませんか?
この記事では、5Gの技術要素をベースに、5G関連銘柄の探し方、伸びる企業の見つけ方をご提案させていただきます。肌感覚では、5G時代に何がキラーアプリケーションやユースケースになるか、業界内でも迷走しているように見えます。とはいえ、5Gのプラットフォーム自体が整備されれば、そこから色々なチャンスを見出す企業が現れてくるはずです。つまり、5Gのプラットフォームを作る側の、上流にいる企業がまずは伸びていくのではないか、という仮説を置いています。
目次
5Gの特徴をおさらい
5Gのプラットフォームを作るには、どんな人やモノ、情報が必要なのでしょうか。次世代通信技術と言われるぐらいの5Gなので、技術を出発点として、その上流にさかのぼってみましょう。そのために、まずは5Gの特徴についておさらいします。
次世代通信技術である5Gの特徴は、大きく分けて以下の3つの領域で語られます。
- 高速大容量通信 eMBB=enhanced Mobile Broadband
- 超高信頼低遅延 URLLC=Ultra-Reliable and Low Latency Communication
- 超多接続 mMTC=massive Machine Type Communication
また、これらを組み合わせて顧客にサービスを展開するために、以下の領域での議論が活発です。
- エッジコンピューティング Multi-access Edge Computing
- ネットワークスライシング Network Slicing
- スモールセル Small Cell
これらの領域を実現する技術について、上流にさかのぼって考えることで、関連する業界や企業が見えてくると思います。
5Gを実現する技術領域はどこか
5Gの特徴をベースに、それぞれがどんな技術領域で成り立っているのか、簡単に説明します。
高速大容量通信 eMBB=enhanced Mobile Broadband
高速大容量通信を実現するためには、広い帯域で高い周波数で通信する必要があります。全体のシステムを考えると、インターネット→ネットワークコア→基地局→端末という登場人物がいます。無線区間で考察すると、ロスが少ないRFフィルタや、通信パスを増やすためのアレイアンテナ、そのモジュール化が技術領域ということができます。有線区間については、後に出てくるスモールセルの項目で考察することにしましょう。
超高信頼低遅延 URLLC=Ultra-Reliable and Low Latency Communication
超高信頼性低遅延を実現するために、無線区間の通信プロトコルであるShort TTI (Transmission Time Interval)やFast HARQ-ACKを使います。プロトコルなので、通信を担当するASICとプロトコルスタック(ソフトウェア)の領域です。一方で基地局側は、端末近くにサーバーを置く、エッジコンピューティングという技術を使って低遅延を実現します。後に出てくる項目で考察しましょう。
超多接続 mMTC=massive Machine Type Communication
超多接続をセルラーネットワーク上で実現するには、既にCategory M (通称Cat. M1)やNB-IOTという標準規格があり、ネットワーク運用も徐々に始まっている地域もあります。ネットワークベンダー側がプロトコルを実装することが第一歩。代表的なアプリケーションとしては、各住戸のガスや電気のメーターにモニターを設置したり、町中にカメラを設置して防犯に利用したりと、具体例も現れ始めています。カメラをはじめとしたセンシング技術と、それを通信と共に低消費電力で実現するプロセッサ入りモジュールが必要とされます。
エッジコンピューティング Multi-access Edge Computing
エッジコンピューティングは低遅延を実現するコアな概念です。5Gのコアネットワーク上に汎用サーバーを置くことで、インターネットから切り離し、物理的に端末との通信経路が短いので、当然遅延時間が短くなります。汎用サーバー業界がカギとなります。
ネットワークスライシング Network Slicing
ネットワークスライシングは異なるサービス要件に柔軟に対応するために、eMBB, URLLC, mMTCを仮想的に組み合わせる技術です。シンプルに言うと、ソフトウェアでバーチャルに論理チャネルを構築することである。5G Coreの基礎中の基礎であり、ネットワークベンダーが主役の領域となります。
スモールセル Small Cell
スモールセルの目的は、地理的に空白が無いよう、無線ネットワークを張り巡らせるためです。特にmmWaveと呼ばれる数十GHz帯の電波は、電力の減衰が現在のLTEより大きいので、より細かくメッシュ状に基地局を張り巡らせなければなりません。また、従来よりも高速な信号伝送が必要なので、低ロスな信号ケーブルがたくさん必要になるでしょう。
これらをイメージしていただいて、それぞれの技術領域における業界を考えていきましょう。
5G関連業界を技術領域から考える
アナログ部品業界
RFフィルタ、アレイアンテナなど、高周波対応部品を提供する業界。また、受信した高周波を信号処理部に伝送するためのリジット基板、フレックス基板もセットで使用される可能性が高いです。端末メーカーの取引先を調べてみるとよいでしょう。
通信事業業界
プラットフォームの出口を牛耳る通信事業者はもちろん一丁目一番地です(NTTドコモやKDDI、ソフトバンク、楽天など)。それに加えてネットワークを刷新しなければならないので、ネットワークベンダ側も注目です(エリクソン、ノキア、ファーウェイなど)。低遅延の肝であるエンジコンピューティングは、一般的なサーバーを提供する企業は想像しやすいですが、クラウドソリューションごとサービス展開するマイクロソフトやアマゾンも目が離せません。
IoT業界
センシングデバイス、IoT通信モジュールなど、IoTのイベントやウェブサイトを見ると、大企業やベンチャー企業が入り乱れていて、このビッグウェーブに乗ろうという意気込みが感じられます。この中で、センシングと通信モジュールの、いわゆる部品と呼ばれるモジュールを開発している小さな企業がオススメです。大企業との提携発表前に上手く掴めば、儲けものですね。
設備業界
私個人的な肌感覚ですが、5G業界の情報を見ていても、スモールセルが沢山必要になることは言及されていますが、その設備を誰がどうやって工事するのか、イマイチ見つけられません。また、基地局アンテナの小型化の話は聞きますが、それをコアネットワークに繋げるまでの低ロスケーブルもあまり話題になっていません。電気工事会社やケーブル屋さんは意外に落とし穴だと思います。
まとめ
この記事では、5Gの技術要素をベースに、5G関連銘柄の探し方、伸びる企業の見つけ方を提案させていただきました。5Gをプラットフォームとして、どんなビッグウェーブがくるか、業界でのコンセンサスがあまりとられていない中では、プラットフォームを構築する側にさかのぼって業界調査をするのがよいという提案でした。
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