湾岸プロマネ日記

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【プロマネ日記】組込みエンジニアがプロジェクトマネージャーになるまでの道のり

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組込みエンジニアからキャリアをスタートし、途中、紆余曲折し、10年後にプロジェクトマネージャーへ転身。

エンジニアがキャリアアップをする道しるべは沢山ありますが、この記事では、モバイル業界にて組込みのハードウェアエンジニアからキャリアを始め、ソフトウェアのプロジェクトマネージャーを経て、1商品のプロジェクトマネージャーへキャリアを積み重ねた筆者の足跡を説明します。キャリアアップに不安を抱えたエンジニアの1つの選択肢として参考にしていただければと思います。

 

 

  

 

組込みエンジニアの日常

組込みエンジニアとして1番の喜びって、個人的には20年前も今も変わりません。世界で初めて新しいチップ(LSI)が基板に実装されて、中のOSとプロトコル通信ができたとき、そりゃ、もう、ゾクゾクします。

今でこそ、QualcommやIntel、Samsung、ハイシリコンに支配されている組込みCPU業界ですが、当時、私はOMAPというテキサスインスツルメンツ社が社運をかけて開発する、ARM-CPUとTI-DSPが混在したプロセッサの評価を担当してました。CPUとDSPが1チップって、当たり前やん♪と思うかもしれませんが、当時の主流は別チップでして、それらを1チップにしたのは業界初の試みで、そのエンジニアリングサンプルを評価ボードを使って、ガシャガシャ動かしているときの高揚感は今でも忘れられません。

 

具体的には、はんだ付けしたり、線出ししたりして、オシロスコープで波形測ったりするわけで、まぁ、根性がいる作業でした。アセンブラで直接レジスタを叩いて、電源とかリセットとかGPIOを動かして、周辺回路(液晶とかカメラとか)を初期化してとか、この辺の抽象度になってくると、そこそこ楽しくなってくるわけです。なぜ楽しいかというと、チップが上がってくる前に、膨大な量の仕様書を読み込んで、このチップをどう動かすのかを理解し、周辺回路がどう動くかも理解し、シーケンス図やアプリケーションノートを書いて、それが合っているかどうかを評価するわけです。これが間違っていると、その後工程のソフトウェアデバイスドライバー開発に支障がでて、全体日程へインパクトがでます。

 

当時はデバイスドライバーだってほとんどベタ書きで、載ってる商用OSのお作法に私のアプリケーションノートを合わせるような感じで、何かあるとしょっちゅう呼びだされて質問攻めされました。なんか、人から頼られるって、ちょっと嬉しく感じた瞬間でした。主に評価ボードと悪戦苦闘する我々HWエンジニアにとって、ビルドしたソフトを完成品にダウンロードしてUI評価って、なんて生ぬるい仕事なんだって思ってました。今考えると、役割分担なので当たり前ですが。

 

 

 

ハードウェアエンジニア vs. ソフトウェアエンジニア

「vs」って、対立関係みたいに書きましたが、もちろん実際はお互いを補いながらものづくりをしていくわけです。とはいえ、ここまでがハード、ここからはソフトのように、予め設計図を決めているので、それをどうやってうまく作れるかがポイントで、それをうまく作れる人が優秀なエンジニアなのです。アーキテクチャとでもいいましょうか。さらに言うと、多少のワークアラウンドが発生しても仕方がないが、ハードウェアに致命的な不具合がでないように全体のアーキテクチャを組めることが、トップオブアーキテクトでしょうか。なぜなら、商品を出荷しちゃった後には、ハードウェアは直せないからです。開発中であっても、ソフトウェアの修正は、組込み系であれば数時間、長くても1日かかりませんが、ハードウェアの修正は、数か月単位です。

 

  • ハードウェア:修正リードタイムが長い。修正コストが高い。アナログなのでバラつきがある。一発勝負。
  • ソフトウェア:修正リードタイムが短い。複雑なので修正の影響範囲が読み辛い。トライアンドエラー。

 

こうした特徴がありますが、当時、ソフトウェアチームに修正依頼をかけても、なかなか対応してくれませんでした。昔はオブジェクト指向が始まったばかりなので、正直、コード変更して、周囲にどのぐらいのインパクトがでるのかわからないのが怖い。自分がいじったコードが、他にどのような影響を及ぼすかを把握するのが至難の業。修正したことによる影響確認は、コードレビューよりも実際の評価で出たとこ勝負という、非常に危なっかしい状況でした。修正リードタイムが短いにも関わらず、大規模評価待ちになっちゃうので、直すのに1か月かかりますとか平気で言ってこられて、よく揉めてました。

 

 

 

プロジェクトマネージャーへの道、8合目

もはやそこまでくると、逆に興味が湧いてきました。なぜそんなに時間がかかるのだろう、なぜそんなに修正したくないのだろう、などなど。この頃になると、プロジェクトマネージャーへの最終ステップが見えてきていて、ハードウェアのリーダークラスに進むか、ソフトウェアのリーダークラスに進むか、幸いにも2つの部署から声をかけてもらっていました。当然、誰がどう考えても、8年経験したハードウェアのリーダークラスに進むのが順当です。自分の守備範囲も分かっているし、そもそもソフトなんてやったことないわけですから。

 

ところが、私が選んだ道はソフトウェアのリーダークラス。

理由は以下の3つ

  1. プロジェクトマネジメントって大規模開発のソフトウェアの方が主流だったから
  2. 人と違ったキャリアを積んで、希少な存在になりたかったから
  3. ソフトウェアエンジニアの気持ちが知りたかったから

 

1商品のプロジェクトマネージャーは、私のモバイル業界で言うと、企画から始まり、開発はもちろん、調達、製造、販売、アフターサービス等、全方位でプロジェクトを運営します。当然、コスト、品質、デリバリーのターゲットを予定通り達成することが求められます。特定の開発分野を深く掘り下げ、かつ、周辺にだんだん広げていくというキャリアパスをたどることは理に適っていると今でも思います。

 

 

 

まとめ

プロジェクトを運営するには、幅広い領域への対応能力が必要です。

技術を武器に商品で戦っていく会社であれば、1つの技術分野をある程度突き詰め、周辺のことにどんどん首を突っ込んで幅を広げることが、プロジェクトマネージャーへの1つの道程。

組込みエンジニアという、わりとニッチな範囲でモノが動くエリアに立ち会えることは、貴重な経験だと思いますので、まずはのめり込んでみてはいかがでしょうか。

 

 

本ブログのプロマネ日記カテゴリーでご紹介している内容は、以下の記事をご参照ください。

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